(平成27年5月改定)
入管法では、経営・管理の在留資格(ここでは「経営・管理」とします)は「日本で貿易その他の事業の経営を行いまたは当該事業の管理に従事する活動」を行う場合に許可されます。
経営・管理に該当する業務・活動の例
- 外国企業の子会社を日本で設立して、その経営を行う。
- 日本で新たに自ら出資して会社を設立し、実質的にその経営を行う。
- 日本の既存企業の事業に参画してその経営を行う。
- 日本の企業もしくは日本にある外資系企業の事業の管理に従事する。
日本の不動産の取得や日本の法人等へ出資をするだけでは、経営・管理を取得することはできません。日本で事業の経営や管理に実質的に従事しない場合は、経営・管理は許可されません。
また、申請人の主たる活動が現業に従事すると認められる場合(例:自ら出資して飲食店や旅館業を営む会社を経営しながら、飲食店の調理やホールの業務に主に申請者自身が従事している)は経営・管理と該当しないとされています。
日本法人の経営者に就任していない場合(管理業務にあてはまる場合を除く)や、就任していても無報酬である場合では、会議などに参加するために短期滞在で来日することができます。活動内容によっては技術・人文知識・国際業務や企業内転勤などの在留資格にあてはまる場合もあります。
経営・管理が許可されれば、入国管理局が申請者の状況に応じた在留期間(3ヶ月、4ヶ月、1年、3年、5年のいずれか)を許可します。自分自身で出資し、新しく設立した会社の経営者として経営・管理を申請した場合、最初に許可される在留期間は1年と考えておいたほうがいいでしょう。
「経営・管理を取得することで、永住許可が取りやすくなる」ということはありません。
準備を始める前に、しっかりと要件を確認
経営・管理の要件は、日本企業への出資や会社を設立するというだけで許可されるわけではありません。また、事業が立ち行かなくなる可能性が認められる場合には許可されません。事前にしっかりと要件を確認して、ご準備下さい。
事業計画では予測売上高の根拠や、必要経費の明細、組織体制、取り扱う商品の詳細、取引先・仕入先、飲食店などの場合にはメニューなどを具体的に示す必要があります。また、許可や免許が必要となる事業の経営に従事する場合には、先に事業の許可・免許等を申請しなければなりません。
また、経営・管理の在留資格は、事業の経営や管理に従事するために許可されるものです。そのため、会社を設立したとしても、会社の店舗でもっぱら調理やレジ打ちなどを行っていたり、会社が経営する教室でもっぱら授業を行っているなどでは許可されません。
日本の制度について知る、専門家とのコネクションをつくる
日本で事業を行うのですから、日本の法律や制度に基づいて事業を運営していかなければなりません。特に、税務や社会保険、労務管理等に関する日本の制度については、前もって調べておいたほうがいいでしょう。確定申告や源泉徴収等、必要な手続き等を怠っていると更新できない場合もあります。また、何でも相談できる日本の各専門家とのコネクションを作っておくとよいでしょう。
4ヶ月の在留期間が許可されたとしても・・・
会社設立前であっても4ヶ月の在留期間の経営・管理が許可されます。
ただし、在留期間が6ヶ月未満の在留カードでは、事務所の賃貸契約や銀行口座を開設することは簡単ではありません。特に銀行口座の開設は、日本に6か月以上滞在していない、もしくは許可された在留期間が1年未満の外国人の場合、銀行や支店によっては口座利用に制限がある「非居住者用」の口座となる場合があります。ですので、先に何らかの就労ビザや留学・文化活動・ワーキングホリデー等(在留期間1年以上で許可されることが望ましい)で日本に入国した後で会社設立を始めるか、日本人もしくは既に日本在住の協力者を見つけて進めていく方が現実的です。
更新のことも考慮する
初めて経営・管理を申請する場合、それまでの日本滞在歴や事業規模、報酬額にもよりますが、多くは在留期間1年での許可となります。また、債務超過となった場合や2年連続赤字が続いてしまうと、更新が許可されれにくくなります。許可申請時には、1年後の更新もふまえてしっかりと事業計画を立て、それに沿った事業運営を行って下さい。また、事業主に求められている税務・労務の手続きは、必ず行っておいてください。
許可の基準と要件:経営者となる場合
在留資格にかかわらず、許可の基準を満たすことが前提です。
>> 許可の基準
次の全てを満たすことが必要です。
申請人が日本で行う活動が、経営・管理に該当するもの
- 日本で貿易その他の事業の経営を行いまたは当該事業の管理に従事する活動であること。
- 申請人が日本で行う活動に対して報酬が支払われ、日本で生活できるだけの収入が見込めること。
事業を行うための事務所が日本に存在していること
事業を行うための事務所が日本に存在し、確保されていることが必要です。
- 事務所の賃貸契約が法人等の名義であり、法人等による使用であることが明確であること。
- 事務所の賃貸契約書に、「事業用」として賃貸していることが記載されており、十分な期間(最短でも1年が望ましい)で契約されていること。
- 住居の一部を事務所とすることは可能であるが(使用目的に「事業(事務所)使用可」の記載があること)、居住スペースから独立した、事業に使用すると認められる部屋を事務所としていること。
- 事務所には事業を行うための設備が整っていること。
- 社名や屋号が確認できる表札、郵便受けが設置されていること。
日本で事業を行うことができる規模であること
事業の規模が次の1~3のいずれかであること。なお、事業内容によっては従業員の雇用が必須となります。
- 常勤職員を2人以上雇用している。
この2人以上の常勤職員は、日本人もしくは「永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者」の在留資格を持つ外国人であること。
- 資本金の額、または出資金の総額が500万円以上であること。
事業に500万円以上が投資され、その投資で継続できる事業であるかどうか(毎年500万円を投資し続ける必要はありません)。
- 上のいずれかに準ずる規模であると認められるもの。
事業の安定性・継続性が認められること
事業が適正に行われており、安定性・継続性が認められるものであること。ただし、事業規模や役員構成(役員に他に経営・管理の外国人がいる)によって判断されます。
- 事業主として必要な税務・労務関係の手続きおよび届出が行われていること。
- 許可や免許が必要な事業を行う場合(例:旅館業、旅行業、古物商免許など)には、先に許可等を受けていることが必要となります。
- 事業計画が具体的・合理的であり、実現可能であること。経営・管理は、資本金額、事業の安定性・信頼性、営業損益(見込み)、従業員数、業種等で総合的に判断されます。事業内容(レストラン、カフェや語学教室、文化教室など)により、従業員の雇用が必須です。
許可の基準と要件:管理者となる場合
在留資格にかかわらず、許可の基準を満たすことが前提です。
>> 許可の基準
経営者となる場合の要件に加えて、以下の両方を満たしていることが必要です。
- 事業の経営または管理について3年以上の経験
(大学院において経営または管理にかかる科目を専攻した期間を含む)があること。
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
経営・管理の在留資格を申請するには
申請人が現在外国に居住している、もしくは短期滞在の外国人の場合:
>> 在留資格認定証明書交付申請
申請人となる外国人が既に特定の在留資格のもと日本で活動している場合:
>> 在留資格変更許可申請
基本的な必要書類
以下は入管が基本的に求めている書類の一例です。
事案に応じて、申請人や事業を立証する資料を提出する必要があります。事業形態や役員構成の内容などに応じて、どういった書類で立証できるのかを検討しながら、準備しなければなりません。
(1)申請書
(2)写真(縦4cm×横3cm)
(3)認定申請時のみ:切手貼付済の返信用封筒
(4)変更申請時のみ:パスポートおよび在留カードの原本の提示
(5)カテゴリーのいずれかに該当することを証明する文書
(6)申請人の活動内容などを明らかにする次のいずれかの資料
- 日本法人である会社の役員に就任する場合:
-役員報酬を定める定款の写しまたは役員報酬を決議した株主総会の議事録
- 外国法人内の日本支店に転勤する場合および会社以外の団体の役員に就任する場合:
-地位、業務、期間および報酬額を明らかにする書類(異動通知書など)
- 管理者として雇用される場合:
-労働条件通知書もしくは雇用契約書など
(7)管理者として雇用される場合:学歴および経験を立証する資料
- 関連する職務に従事した機関、活動内容および期間を明示した履歴書
- 関連する職務に従事した期間を証する書類および関連する学歴を証する書類(例:従事証明書、卒業証明書など)
(8)事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
- 法人の場合:登記事項証明書(登記が完了していないときは、定款他)
- 会社概要(沿革、役員、組織、事業内容、取引先や実績などが記載されているもの)
- その他、事業内容を証する資料
(9)事業規模を明らかにする次のいずれかの資料
- 常勤の職員が2人以上であることを明らかにする賃金台帳および職員の住民票など
- 登記事項証明書
- その他の事業の規模を証する資料
(10)事業所用施設の存在を明らかにする資料
- 不動産登記事項証明書
- 賃貸借契約書
- その他の事業所を証する資料
(11)事業計画書
(12)直近年度の決算書
(13)前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
(14)前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出できない場合:
- 源泉徴収の免除を受ける場合:外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料
- 上記以外の場合:給与支払事務所等の開設届出書の写し、直近3ヶ月分の源泉納付書もしくは源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
注意事項
- 状況に応じた立証資料を提出します。
- 外国語で記載されている書類は全て日本語翻訳を添付することが必要です。
- 申請人の雇用主が次の1~3のカテゴリーにあてはまる企業の場合、省略できる書類があります。 1)上場企業、2)法定調書合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上、3)前年分の法定調書合計表を提出できる企業
- 審査期間中に入管から追加書類を求められることがあります。
- 日本の官公庁・市区町村で発行される証明書は、発行日から3ヶ月以内のものを提出します。
在留期間
在留期間は、申請した在留資格と申請者の状況に応じて、入管が決定します。
経営・管理では5年、3年、1年、4ヶ月、3ヶ月のうちのいずれかが、状況に応じて決定されます。
同じ活動内容でその後も日本で滞在する場合には、在留期間更新許可申請をします。在留期間満了日の3ヶ月前から満了日までに手続きをして下さい。
>> 在留期間更新申請
在留カードをもつ外国人が旅行などで一時的に日本を出国し、再度入国する場合には再入国許可もしくはみなし再入国許可が必要です。
>> 再入国許可